なんだろう。
この人の文章には特有のほのぼのとした感じがあるというか、その話の中でとても重要なことであるはずなのに、「へぇ、そうなんだ」とすんなりと受け入れさせてしまうものがあります。
今回の話もそんな感じ。
育生と母である君子の関係は堅いものだけど、社会的に見ればそうじゃない。でも、お母さんは育生にあっさりと説明してそれを育生に納得させてしまう。読んでいるこちら側も「おお、そうなのか」と不思議と頷いてしまう。
瀬尾まいこさんのこういった不思議な感覚にさせる文章が好きなのかもしれません。
それにしても、育生と育子はつまり12歳も離れている兄妹なのかと思うと……なんだかすごい気がします。
この文庫のなかにはもうひとつ「7's blood」という話も入っていて、実は「卵の緒」よりそっちのほうが長い(笑。
これまた不思議な感じのお話です。
七子と七生の異母姉弟が二人で生活するというもので……視点が主軸の七子の気持ちの変化がよく描かれているような気がします。
なんだか変な空という描写が、実はあのことを暗示していたのかと気付いた時には描写の巧みさに驚きました。七子の微妙な感情の変化もあの場面でわかります。
家に瀬尾まいこさんのがもう一冊あるので、近々読みたいです。
世界史で登場するような有名な女性もいれば(ジャンヌ・ダルクとか則天武后とか)、あまり有名じゃない女性も多数いました。
一人一人のエピソードが短いのでわりと読みやすかったです。世界史の背景知識にもなりました。
ただ、なんだろ……ちょっと俗っぽい感じがしました。
所詮そんなもんなんだろうなって思いましたけど、あまり美しくはないと思います。理想を抱いていたりすると、綴られている内容とのギャップに違和感を感じると思います。
エロイーズとアベラールの恋愛は綺麗な感じがしていたのに、私はちょっと裏切られたような気分になりました(笑。
悪女とかに興味がある方にはオススメかもしれません。
出てからだいぶ経ちましたが、読みました橋本紡の新刊。
テーマは妊娠と出産。ここ数年妊婦のたらい回しがニュースになったり、あとは「お産難民」という言葉を聞いたりしましたけど、そういったものを含めたものがテーマとなっています。
私はまだ18歳ですが、女性の一人としておそらくいずれ向き合わなければならないことです。他人事ではありません。
主体のストーリーは記者の由佳子が『特集―産む―』というテーマで記事を書くことで多くの女性や夫婦にインタビューをするという展開(同時に某産婦人科医訴訟事件も追っています)ですが、間にその彼らの視点からの話が挿入されています。
一番初めは、幸せな結婚をして妊娠したけど、流産してしまう女性。
二番目は、結婚したけど、子供ができないことに悩む女性。
三番目は、妊娠をしたけど産む場所がないことに困っている女性とその旦那さん。
……そういった感じでいくつもの視点から、妊娠や出産について描かれています。
話のなかに何度も出て来ましたけど、女性が妊娠できるピークは三十代半ばまでらしいです。それ以降は急速に体が老いていく。35歳と36歳では歴然とした差があるそうです。
最近、二十代は結婚せずに自由にやりたいと考える女性が世の中には増えています(私も実際にそうしたいし)。けど、そうしてから結婚したあともたもたしていると、あっという間にピークを過ぎてしまう。子供が欲しいのに、難しくなってあとあと苦しい思いをしなければならなくなってしまう。
それってどうなのかな、と思いました。
もちろん、子供は要らないと思っている人なら別でしょうけど、子供が欲しいと思っている人にとって、子供を得られないというのは拷問に近い苦しみなのではないでしょうか。
私は結婚したいと思っているし、同時に子供も欲しいと思っています。もしも、自分が子供を得るのに難しい状況に立たされることを考えるだけで、とても辛い。まるで私自身を否定されているかのような気分になります。
遊びたい、という気持ちはありますけど、それで未来の自分が苦労することになるようならしっかりと現実を見ていく必要があるのだと感じました。何事においても。
これまでの橋本先生の作風とはちょっと違う感じがしましたが、橋本先生らしさも残っています。
今までなおざりにしか思っていなかったことを考えさせてくれた一冊でした。
読んでみたら、まさに私が興味のあることについて書かれていました。
現代社会の心理と、過去の様々な国の歴史と照らし合わせて共通点を見つけ、そしてどのようにして歴史から学び、それを反映させるか。
この本において、現在の日本は「自己愛型社会」であると著者の岡田さんは述べていますが、典型的な「自己愛型社会」だった古代ローマ(共和政期から帝政期)、オランダ、そしてアメリカを日本と比べています。
読んでいると、今の日本が恐ろしくそれぞれの国と共通点があることがわかります。古代ローマの帝政期なんかそもそも日本と政体が違うじゃないか、と思っていましたが、そうでもない。市民の自由さは日本と同じと言っても過言ではないと思います。
前々からアメリカの体制は古代ローマに似ている(特に大統領とディクタトル)と思っていたのですが、この本ではそれについても書かれていました。むしろ、アメリカは古代ローマをお手本にしているらしい。
書かれていて「ほう」と思ったのは、古代ローマとカルタゴが地中海の制海権を争っていたのに対比されて、アメリカとソ連が世界の席巻(とまで言っていいのかな?)を争っていた構図についてです。
古代ローマはポエニ戦争で宿敵カルタゴに勝利してから一気に勢力を拡大したように、アメリカもソ連が崩壊してから(戦争らしい戦争がなかったことに関しては似てませんけど)独走して世界の覇者となった、と。
探ってみればみるほど、アメリカと古代ローマの接点というものはざっくざっく出て来ます。
怖いのは今後の日本の行く末ですね。
アメリカはまだどうなるかわかりませんけど、古代ローマと同じ運命を辿って国自体が失くなってしまうのか、それともオランダのように衰退して細々と生き残るか……。
日本の将来がどうなるか。
明確な答えを私はまだ出すことはできません。
当分この疑問に悩まされそうです。
テキストに載っていたらしい……。
最初は淡々と過ぎていてあまりつまらなかったんですけど、夏休みが明けてからの展開に引き込まれました。
親が懇談会で話しているシーンは面白かった。実際の懇談会もこんな感じなのかな、と想像してみたり(笑。
貸してくれた友人とどこが転換点だったかという話をしたんですが……
私は夏美が授業を放棄して教室を出ていったシーン(二度目)で、彼は夏美が母親に激昂したところだと言ってました。ちょっと難しいところかもしれません。
読んでみる人によって、違う気もします。
後半の後半……
変わっていく母親、「ワシ」という一人称の青年(端役だけど)、色々と錯誤する夏美。
それぞれ三人の考え方は違っても、何か共通する部分がありました。
「これしかない!」という答えはないんだろうなって思いました。簡単に片付くような問題だったら、こんなふうになることはない訳ですから。
浪人している最中に読めて良かったです。
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英語はそれなりに読んだり聞いたりして理解できるけど、喋るのはあまり得意ではなかったり。第二外国語ではフランス語、第三外国語ではラテン語を学習中。
将来的には作家になりたいので、創作の肥やしにするために色んなものを聞いたり見たり読んだりして経験値を増やそうと日々奮闘してます。
くわしいプロフィールは下のURLから。
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